骨折を早く治す2つの視点

目的別の栄養学, 骨折・骨端症

骨折を早く治す2つのポイント

【要約】

骨折を早く治すには、骨折部分の代謝を活性化させることがポイントです。それには【体外アプローチ】と【体内アプローチ】が必要です。

体外アプローチは、ギブスなどの固定期間をいかに短くして、外部から刺激を与えていくかが重要です。体内アプローチは、身体のすべては栄養から作られており、回復も栄養が影響することから、栄養力による代謝活性化です。

治療期間の大部分を占めるリハビリ期間は、治癒期間の3倍以上かかることから、骨折からの復帰を早めるには、初動の癒着期間の短縮が重要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外部からの刺激治療

骨の癒合では、骨芽細胞が活性化します。外からの刺激で、その細胞を活性化させようとするものです。代表例として、超音波治療、低周波治療器、温熱療法、鍼灸などがあります。酸素カプセルを取り入れている選手もいますが、まだ正確なエビデンスがないようです。

内部からの栄養療法

自然治癒力を高め、骨代謝を促進させる栄養成分を、積極的に摂取する方法です。大きくは「骨の原料になる栄養」と「代謝を促進させる栄養」に分けられます。(詳しくは後述)

骨の原料になる栄養

「骨の栄養=カルシウム」ではありません。カルシウムが骨に定着するには、骨タンパク質が必要です。ちなみに骨密度が減少する骨粗鬆症は、骨量の3割を占める骨タンパク質が減ることで、カルシウム量が低下する症状です。サプリなどでカルシウムだけをとるのは、血管や内臓の石灰化を促進させるので危険です。

主な骨タンパク質は「Ⅰ型コラーゲン」といわれる線維状のファイバープロテインで、激しい運動や加齢によって不足しますが、積極的にとることで、骨芽細胞が活性化することが報告されています。

スポーツ界が注目する強い骨をつくるファイバープロテインとは?

代謝を促進させる栄養

月並みですが、バランスのよい栄養をとることです。ミネラルやビタミンが不足していては、タンパク質を代謝することができません。平成29年の厚労省が行った国民健康栄養調査によると、ビタミン・ミネラル18種類のうち16種類が不足していて、中でも5種類が平均4割以上欠乏しているとしています。

特に運動をする方は、エネルギー代謝や活性酸素除去、筋損傷の修復などで、大量のビタミン・ミネラルが消費されるので、多めの摂取を心がけてください。その上で成長ホルモンの活性化を促すアルギニンやグリシンなどのアミノ酸が効果を発揮します。

骨ができるまで

意外と知られていないのが、骨の構造と骨が作られるメカニズムです。骨は「破壊」と「形成」という新陳代謝骨を繰り返しています。そこに骨折を早く治す秘密が隠されています。

骨の3層構造

骨の構造

骨は「骨膜」「緻密質」「海綿質」に分かれています。「骨膜」は線維状の強靭な膜で、骨全体の包んでいます。

「緻密質(ちみつしつ)」は骨表面の硬い部分で、「海綿質(かいめんしつ)」は骨内部のスポンジ状の部分です。骨膜を除いて2層構造ともいいます。

骨膜のしごと

骨全体を包む骨膜は「線維層」といわれる外膜と「骨形成層」といわれる内膜に分かれます。外膜はコラーゲン線維と線維芽細胞で構成され、靭帯、腱、関節包との付着部になります。内膜は骨芽細胞(骨をつくる細胞)を含み、骨の形成を助けます。骨膜には多くの血管と神経が通っていて、骨折痛を発生させます。

緻密質のしごと

硬い緻密質(ちみつしつ)は、骨の強度を担っています。血管を中心にバームクーヘンのような同心円柱(縦層)が何本も重なっていて、横の曲げに強い構造になっています。成分構成はⅠ型コラーゲンが鉄筋の役割をして、そこにリン酸カルシウム、マグネシウムなどの無機物がコンクリートの役割をしています。

海綿質のしごと

骨の内部はスポンジ状(海綿)の構造になっています。スポンジ線維は骨梁(こつりょう:骨質ともいう)といわれ、外部からの圧力を吸収し、骨の弾力性と強度を支えています。海綿質成分はⅠ型コラーゲンが担っていて、この不足や減少が骨強度や骨弾力性を低下させ、折れやすく治りにくい原因になっています。

スポーツ界が注目する骨タンパク質「ファイバープロテイン」とは?

骨折が治るしくみ

骨代謝は「骨新生」や「骨リモデリング」ともいい、骨を分解する「破骨細胞」と、骨を形成する「骨芽細胞」による代謝システムです。

通常の骨代謝

骨代謝のサイクルは、種類や年齢などで変わりますが、多くは3ヶ月ほどで作り替えられます。

まずは破骨細胞によって古骨を分解する「骨吸収」が起こります。分解物は血液中に取り込まれ、カルシウムは新たな骨代謝、筋肉収縮、情報伝達、ホルモン分泌などに再利用されます。骨吸収で欠落した部分には、骨芽細胞がコラーゲンを合成しカルシウムを埋め込む「骨形成」が起こります。

*参考文献:コラーゲンが骨の質を高める!「老いない体」は骨で決まる 著者 山田豊文(青春出版)

骨折を治す骨代謝

骨折の治癒は「炎症反応」と「骨形成」に分けられます。炎症反応では患部に内出血が起こり、免疫細胞が集結します。免疫細胞は骨折で生じた骨断片や細胞組織を除去して、炎症を引き起こします。

骨形成では欠損部に免疫細胞(リンパ球/ガンマデルタT細胞)が増加し、IL-17(インターロイキン-17)を作り出します。それが幹細胞や骨芽細胞を増殖させ、コラーゲン合成を高めることで骨折を治します。

参考文献:東京大学医学部 免疫系が骨を治す~骨折治癒の仕組みを解明~

骨折を早く治す栄養!

骨折を早く治す栄養は、大きく分けて4つです。骨代謝の促進をサポートします。

  • タンパク質
  • ビタミン
  • ミネラル
  • アミノ酸

タンパク質をとる!

骨タンパク質とは「Ⅰ型コラーゲン」のことです。一般成人のコラーゲン合成量は5g/日といわれています。しかし骨折時は、患部での代謝が活性化するので、通常の3~5倍は摂りたいですね。

コラーゲンを食べる!

コラーゲンの合成

コラーゲンを食べることで、コラーゲンの合成量が増えるとされています。デュッセルドルフ大学の研究では、骨折患者に一日8gのコラーゲンを摂取させた結果、通常の倍~3倍も早く治ったと報告しています。

以前、コラーゲン効果は疑問視されていましたが、現在は有効性を確認する報告が複数されています。その要因にコラーゲンにしかない複数のヒドロキシ系アミノ酸の存在があります。

スポーツ界が注目するファイバープロテイン(骨タンパク質)とは?

ビタミンをとる!

ビタミンの中でも「ビタミンC」「ビタミンD」「ビタミンK」が、骨折の治癒に大きく関わります。

ビタミンC

ビタミンCはコラーゲンの合成に関わる栄養素で、これがないとコラーゲンを作れません。米国マウントサイナイ医科大学の研究では、ビタミンCを投与することで骨密度があがったと報告しています。ビタミンCは「骨芽細胞」と「骨化/石灰化」の2つの働きを活発にします。

ビタミンD

ビタミンDは「骨をつくるビタミン」として、破骨細胞と骨芽細胞を活性化します。ビタミンDは血中のカルシウム濃度をコントロールして、腎臓でのカルシウの再吸収促進や排出抑制をサポートします。食べ物に含まれるビタミンDが日光(紫外線)を浴びることで、活性型ビタミンDに変わり機能性を発揮します。

ビタミンK

ビタミンKはカルシウムと結合するタンパク質(オステオカルシン)を活性化させ、骨形成を促進させます。骨粗鬆症の患者は血中ビタミンK濃度が低いとされます。納豆、春菊、菜花、海苔に多く含まれます。

ミネラルをとる!

ミネラルはすべての栄養素の土台となる成分で、不足するとビタミン、タンパク質、脂質、糖質の吸収や機能を低下させます。中でもカルシウム、マグネシウム、リンなどが重要ですが、単独成分の過剰摂取には気をつけてください。ミネラルは総合力が重要で、互いに拮抗しあい悪玉化するのを防いでいます。

カルシウムを定着させる

カルシウムはマグネシウムと「2:1」の割合で骨に定着します。マグネシウムが不足すると、カルシウムが血管や内臓に沈着するカルシウム・パラドックス(石灰化)を起こします。また骨はリン酸カルシウムで作られますが、加工食品に多く含まれるリンが多すぎると、カルシウムの腸管吸収を阻害します。

 関連:【管理栄養士監修】マグネシウム不足で起こるカルシウムの悪玉化!

アミノ酸をとる!

タンパク質を合成するアミノ酸ですが、遊離アミノ酸として単独でも機能を発揮します。中でも免疫を高めるアミノ酸として「グルタミン」「アルギニン」「シスチン」「テアニン」「ヒスチジン」が有名です。

グルタミンは手術後の回復を早めるためにも使われています。海藻、大豆食品、肉類、魚類に多く含まれます。その他は「アスリートの免疫を高める6つの食べ物」でご紹介しています。

栄養の必要量は?

骨折を早く治すには、必要量を確保しやすいサプリメントが効果的です。コラーゲンを中心にビタミンC、総合ミネラル、総合ビタミンは必須です。その他は肉類、魚類、海藻や野菜をバランスよくとることで確保できます。しかしカルシウム単独摂取はNGです。特に牛乳はマグネシウム量が少ないので要注意です。

  1. コラーゲン :6~10g
  2. コンドロイチンやグルコサミン :3~5g
  3. ビタミンC:300~500mg(サプリメントからの推奨量100mg成人男性)
  4. ビタミンB群:適量
  5. マグネシウム600~900mg(サプリメントからの推奨量340~370mg成人男性)
  6. マルチミネラル:バランスのとれたもの
  7. アミノ酸:グルタミン、アルギニン、シスチン、テアニン、ヒスチジン

リハビリをさらに短縮

リハビリ期間が長くなる原因は「筋力低下」です。ギブスなどで完全固定すると、1日で約1%の筋力が低下するとされています。コペンハーゲン大学の研究報告書では、平均年齢23歳(±1)の男性17名の片脚を2週間ギブスで完全に固定したところ、筋力(最大自発収縮率)が28%(±6)低下したといいます。

筋力低下を防ぐ!

筋力低下を防ぐ成分として「HMBカルシウム」が注目されています。それは「筋肉合成促進」と「筋力低下抑制」という2つの作用があり、治療期間の筋力低下を抑制し、リハビリ期間を短縮してくれます。

筋力低下をストップ!HMBで運動できないときの筋トレ法!

コラーゲンで発症率67%減少

コラーゲンを摂取することで、骨折の予防だけでなく、肉離れの防止、筋肉痛の抑制、靭帯損傷の低下など、スポーツ全体の怪我の発症率が低下することが報告されています。

ケガの発症率が低下

コラーゲン摂取による怪我の減少

2年間コラーゲンペプチドを摂取したアスリートの怪我が大きく減少しています。1150名のプロ・アマのアスリートを対象に、2年間Ⅰ型コラーゲンを中心にサプリメントを摂取させたところ、怪我の発症率が最大67%減少したと報告されています。

Wieneck:E. Leistungsexplosion im Sport. iSBN978-3-89899-652-5,288 Seiten(2011)

筋疲労の回復が促進

筋肉痛や筋疲労の回復

コラーゲンの摂取は、単発的な使用でも効果をあげています。特に筋肉痛の抑制、筋疲労の回復促進には定評で、パフォーマンスの向上に貢献しています。

参考文献:Clifford, T, et al., 2019, The effects of collagen peptides on muscle damage, inflammation and bone turnover following exercise; a randomized, controlled trial. Amino Acids https://doi.org/10.1007/s00726-019-02706-5. GROWING STRONGER AND HEALTHIER, ROUSSELOT.

<参考文献>厚生労働省「国民健康・栄養調査」、「コラーゲンが骨の質を高める!「老いない体」は骨で決まる」著者 山田豊文(青春出版)、「ゼラチン・コラーゲンペプチド機能性レポートvol.2~食品としての安全性と骨に及ぼす影響について~」、「ゼラチン・コラーゲンペプチド機能性レポートvol.3~コラーゲンペプチド摂取時の吸収性と骨強度について~」新田ゼラチン、「コラーゲン活性試験結果報告書」・「コラーゲンの秘密に迫る」藤本大三郎(理学博士・東京農工大学名誉教授)、「コラーゲンの理化学試験結果報告」野村義宏ら(東京農工大学)、「トレーニング効果を高める高タンパク質補助栄養とその摂取タイミング」水野眞佐夫(北海道大学大学院教育研究院人間発達科学分野教授)

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